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2022.08.20

【車載バッテリーは交換するもの!中国発のBaaSとは?】

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 世界で電気自動車が急速に普及していることは、このブログの中でも何度か取り上げました。特に中国での勢いには目を見張るものがあります。そして、電気自動車と歩調を合わせるように、車載バッテリーの品質向上や充電スタンドの整備もますます加速しています。日本で電気自動車があまり浸透していないのは、この充電スタンド不足にも原因がありそうです。さて、今世界では「BaaS(Battery as a Service)」というモデルが徐々に広まってきています。これは電気自動車の心臓部である車載バッテリーを所有するのではなく、状況に応じて交換しながら、循環利用していくという発想です。従来のガソリン車では、このようにエンジンをフレキシブルに使い回すということは、全く考えられませんでした。これまでも電池の再利用は、日常生活の中に溶け込んだ営みでしたが、これを電気自動車にも取り入れていこうというわけです。そのために必要な車載バッテリーの交換ステーションも急ピッチで設置されているところです。充電スタンドもまだまだこれからという日本では、このような感覚はピンと来ないかもしれません。今回の記事では、中国での事例にも触れながら、海外のBaaSの現状について、見ていきたいと思います。

電気自動車普及の足かせを解消するBaaS 

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 従来より電気自動車の普及には、車載バッテリーを取り巻く問題の解消が欠かせないと言われてきました。大きく分けると3つの課題があります。まずはガソリンの給油と比較して、充電時間が長いこと。充電に数時間も掛かるようでは、なかなか電気自動車は普及しません。2つ目は車載バッテリーの劣化です。車載バッテリーの寿命は数年から長くても10年も持たないと言われ、その利便性の悪さが難点でした。そして、3つ目は車載バッテリーそのものの価格が高いということです。近年は徐々に価格が下がってきていますが、それでも1台の電気自動車に占める車載バッテリーのコスト比率は、30%~40%と言われ、ユーザーにとっては大きな負担となっていました。そこで、中国でBaaSという新たなビジネスモデルが誕生したというわけです。BaaSでは、車載バッテリーをレンタルするため、その分だけ割安に電気自動車を購入することができます。あくまで車載バッテリーの所有者は、電気自動車メーカーや車載バッテリーメーカーということになります。また、街中に設置されている交換ステーションを利用すれば、使い勝手の悪くなった車載バッテリーを直ちに新しいものと取り換えて、車を簡単に「蘇生」できるようになりました。例えば、中国の北京汽車は2016年からBaaSサービスを展開していますが、2020年時点で1カ所の交換ステーションあたり、約60個の車載バッテリーを常備しており、1日の交換能力も400回レベルにまで達しているということです。

続々登場!中国のBaaSプロバイダー

 ①中国BaaSのパイオニア・Aulton(奥動)は、今後2025年までを目標に、中国国内100都市に1万カ所の交換ステーションを設置するとしています。充電対応が可能な電気自動車台数も1000万台に上る予定とのことです。

 ②電気自動車専業メーカーとしても名を馳せるNIO(蔚来汽車)は、昨年10月時点で、中国国内にすでに535カ所の交換ステーションを設置済みです。2025年までには中国国内外を合わせて4,000カ所もの交換ステーションを開業するとのことです。うち国外に1000カ所を作るようですが、多くは欧州で展開されるものと見られています。昨年NIOはノルウェーで主力車種ES8の発売を開始しており、これと連動するようにノルウェー内でのBaaSの設置にも着手しています。

 ③ボルボの親会社である中国のGeely(吉利汽車)は、2025年までに中国国内に5000カ所の交換ステーションを建設する計画を昨年発表しました。これまた壮大な計画ですが、現在の中国における電気自動車の普及スピードからすると、間違いなく現実のものとなるでしょう。

  電気自動車に加えて、BaaSも大々的に展開していく。さすが中国の新興企業ならではの野心的な取り組みです。これから中国のBaaSモデルをお手本にして、諸外国でも様々なサービスプロバイダーの市場参入が期待されるところです。

台湾・電気バイクにもBaaS

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 そもそも日本では二輪車(バイク)や、いわゆるスクーター(原付)もガソリン車が主流で、あまり電気バイクを見かけません。中国大陸や台湾では、古くから電気バイクが多く利用されており、逆にガソリン二輪車の方が少ないと言えます。台湾の電気バイクメーカーであるGogoroは、BaaSのブランドである「Gogoro Network」と呼ばれる充電サービス網を展開しています。専用の充電ステーションでは、短時間でバッテリーを交換することが可能で、24時間対応もしています。さらにGogoroのアプリをダウンロードすれば、近くの充電ステーションが案内表示され、キャッシュレス決済もできます。当然これらのサービスを利用するためには、Gogoro製の電気バイクに乗らなければなりません。Gogoroの普及と人気を受けて、日本のヤマハ発動機もGogoroのバッテリーを搭載した車種「EMF」を今年からリリースしました。ユーザー視点に立って、充電スタンドとバッテリー交換ステーションがしっかり整備されつつあることが、電気バイクの普及と維持につながっています。車輌とインフラのどちらかが欠けてしまっては、決して未来の乗り物は、広まらないことを物語っています。

電気自動車普及の素地はすでにあった

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 猛スピードで普及する中国の電気自動車とBaaS。しかし、この背景には中国にそれなりの素地が存在していたと考えることもできます。先述の通り、中国では以前から電気バイクが最も身近な乗り物でした。日本ではあまり知られていませんが、中国は自転車大国から脱皮した際、庶民の足になったのは、原付ではなく、実は電気バイクでした。したがって、電気自動車が広がり出す前から、街中に電気バイク用の充電スタンドは、あちこちにあります。マンションの駐輪場、店舗の前、あるいは自宅のコンセントなど、乗り物を充電するという行為は、中国では日常茶飯事だったわけです。したがって、充電の対象が二輪車から四輪車に変わっただけで、現地の人たちにとって、今の状況はさほどの変化ではないでしょう。ちなみに中国語では電気バイクを「電瓶車」と言います。こちらも多数の中国メーカーが群雄割拠の状態で鎬を削っており、激しい競争が繰り広げられています。

まとめ

 BaaSを一大ビジネスとして展開しているのは、目下中国をおいて他にはないでしょう。充電スタンドと交換ステーションを多数設置するにしても、それなりの用地を確保しなければなりません。電気自動車の普及と足並みを揃えて、ガソリンスタンドを撤廃し、代わりにBaaSの拠点を作っていくような取り組みが求められてくるかもしれません。果たして日本でもBaaSが普遍的なサービスとなるのかどうか。今後の新たなプレーヤーの登場が楽しみです。Resoryでは世界各国で活躍する様々な業界のエキスパートと強力なネットワークを構築して、海外でのマーケティング・リサーチのお手伝いをさせて頂いております。エキスパートと協業して、インタビューやアンケートなどを通じて、インターネットや既存メディアでは決して入手できない海外の活きた生情報をご提供させて頂くことが可能です。今回取り上げたテーマについても、実際にもっと奥深い内容や具体的な情報をエキスパートから収集することができます。本ブログについて知見を持っているエキスパートから一次情報を聞いてみませんか?気になる方は是非コチラ(https://resory.jp/contact/)からお問い合わせ下さい!皆様からのご連絡をお待ち致しております。