2022.08.13
目覚ましい科学技術の進歩が、日常の生活をますます便利にしてくれています。世界中の様々な企業が、日夜しのぎを削って研究開発に取り組み、私達はその成果を享受しているわけです。世界をリードする先進企業は、一般人の想像を遥かに越えるところを見据えて企業活動をしています。果たしてどのように開発ターゲットを定めて、未来のテーマを決めているのでしょうか?現在普通に利用している製品やサービスは、ずっと以前に私達が知りようもなかった時代に研究室で実験が繰り返されていたはずです。想像力のたくましい開発者に一任されていたのでしょうか?さて、21世紀に入ってイノベーション大国にのし上がった中国では、官民一体となった科学技術の先進開発に猛進中です。官民一体と言えば、日本やその他の国でもよく耳にしますが、中国の場合は国家の発展目標として大々的に掲げられ、政府による後押しのレベルが格段に違います。科学技術強国・宇宙強国・交通強国など中国では「強国」スローガンがよく見受けられます。今回のブログでは、国と企業が二人三脚で切り拓く中国の研究開発分野にスポットを当ててみたいと思います。
中国の国家目標は5カ年計画として発動されます。最新の第14次5カ年計画は2021年から始動しました。これによると、今後5年間で研究開発投資は年7%以上の増加率と定められています。既に2021年については14.2%の増加率を達成しており、研究開発分野への投資はまだまだ大きく勢いを拡大していくことが予想されます。さらに発明特許件数を1万人あたり12件達成するという目標も設定されています。中国のイノベーションには目を見張るところがありますが、一方で国家の知的財産収支を見てみると、実のところまだまだ赤字状態にあります。つまり、特許など知的財産に限って言えば、海外からの輸入技術などに依存している側面が強いということです。したがって、これから自国の知的財産で稼いで、収支を黒字化していくべく、このような目標が設けられているとも言えるでしょう。
冒頭でも触れた通り、中国ではイノベーションや科学技術の研究が、国家主導で強力に推し進められてきている点に特徴があります。特に基礎研究や宇宙開発などの大型プロジェクトにおいては、国家が果たす役割は大きく、社会主義国ならではの政府によるイニシアティブが十分に発揮されています。さらに国家がグリップを握るという中国特有の市場経済が進むに連れて、IT産業など台頭してきた民間企業との協調にも積極的な姿勢です。民間企業が取り組む研究開発テーマは、国家の意向を汲んでいる一面もあると言えそうです。かつて中国政府が発表した重点的な技術として、バイオ・情報・新素材・先端製造・先進エネルギー・海洋・レーザー・航空宇宙の8分野があります。これらは何れも順調に技術発展を遂げつつあり、確かな成果を上げています。航空宇宙については、間もなく初の国産旅客機による商業運航が本格化します。また、毎月のようにロケットが打ち上げられ、独自の宇宙ステーションの運用も徐々に始まっています。この分野については、今のところ日本は中国に大きく溝を開けられているかもしれません。
広大な国土を有する中国。しかし、この広い中国で初めて高速道路が開通したのは1988年でした。上海にできたこの高速道路は、わずか約16㎞という距離しかありませんでした。そして、中国の新幹線もほんの10数年前に誕生したばかりです。今や高速道路も新幹線も中国全土に蜘蛛の巣のように四通八達し、現在も拡張・延伸工事は止まることなく続けられています。最近では、新疆ウイグル地区に広がるタクラマカン砂漠を一周する世界初の砂漠環状鉄道が完成を見ました。かつて車輌を含む鉄道技術を海外からの輸入に頼ってきた中国ですが、もはや完全に自立したと言えるでしょう。むしろアフリカなど発展途上国へ鉄道インフラ一式を輸出するまでに成長し、新幹線については、諸外国における入札で日本と受注競争になっていることは周知のところです。中国政府は2035年までに交通大国から交通強国になる目標を掲げています。交通技術に関わるあらゆる研究開発に対して、今後も国家主導で活発に投資が行われていくことでしょう。
近年、日本でも中国ブランドの製品を少しずつ目にするようになってきました。例えば、スマホのファーウェイや動画アプリのTikTokなどが挙げられます。しかし、中国ブランドの製品はまだまだ日本でのみならず、世界的にも知名度は低い方でしょう。そこで中国政府は中国ブランドを国内外に広めるべく、2019年から「品牌強国工程」(ブランド強国プログラム)というキャンペーンを展開しています。国営の中国中央テレビ局(CCTV)が中心となって、メディアによる宣伝などを通じて、中国企業の製品やサービスのブランド力の底上げに注力しています。たとえ研究開発に優れていて、製品を市場にリリースできたとしても、商品としてのブランド力も有しなければ、世界の市場で競争に打ち勝つことはできません。そのために国を挙げてブランド力を高めていこうというのですから、中国の大胆な戦略には驚かされます。ここ最近、中国の若者の間で「国潮」というキーワードがトレンドになっています。これは特にファッションなどの分野において、中国ブランドの商品のことを指しています。海外ブランドのような舶来品よりも母国の商品を愛用する。品牌強国工程の効果が少しずつ利いてきているのかもしれません。ブランドという目に見えないものであっても、どのように価値を向上させていくのか、やはり研究開発の対象として、捉えていかなければならないでしょう。
中国一は世界一。中国市場でシェアNo1.を獲得すれば、世界市場でもシェアNo1.になれる。そのような中国企業の商品やサービスは、年々多くなってきているはずです。そこに恐れを抱いているのがアメリカであり、昨今の貿易摩擦や米中対立を引き起こしています。しかし、いよいよ中国のGDPは、アメリカをキャッチアップできる射程距離にまで入ってきました。国と企業が一体となって、経済発展の原動力となる研究開発分野を強化し、投資を加速していけば、予想より早く実現する可能性も考えられます。これからも中国の動向からは目が離せません。Resoryでは世界各国で活躍する様々な業界のエキスパートと強力なネットワークを構築して、海外でのマーケティング・リサーチのお手伝いをさせて頂いております。エキスパートと協業して、インタビューやアンケートなどを通じて、インターネットや既存メディアでは決して入手できない海外の活きた生情報をご提供させて頂くことが可能です。今回取り上げた中国に関するテーマについても、実際にもっと奥深い内容や具体的な情報をエキスパートから収集することができます。本ブログについて知見を持っているエキスパートから一次情報を聞いてみませんか?気になる方は是非コチラ(https://resory.jp/contact/)からお問い合わせ下さい!皆様からのご連絡をお待ち致しております。