2022.08.06
昨今ITやAIの進化に伴い、技術革新のスピードがますます加速しています。これを受けて、企業や組織は身内だけに頼ってビジネス力を高めるだけでは、迅速なビジネス変革に乗り遅れてしまうというリスクを抱える時代になりつつあります。そこで、いわゆる「オープンイノベーション」という考え方を取り入れて、積極的に外部と連携して、セールスやマーケティング、そして研究開発などに取り組むという姿勢が当たり前の世の中になってきました。日本はどちらかというと、従来よりオープンイノベーションの対極にある自前主義にこだわる傾向が強い方だと言えそうですが、アメリカや中国などはオープンイノベーションの先進国で、とにかく相互共有によって自らも強化していくことが巧みです。相手と競争しながらも、コラボレーションできるところは、お互いの強みを出し合いながら発展していく。まさに経営資源の開放による革新の創出です。今回の記事では、海外の代表事例をご紹介しながら、オープンイノベーションの最前線について、探ってみたいと思います。
外部との接点を強化していくことが、オープンイノベーションの根幹ですが、とりわけ重要なことは、自社内部にはいない多種多様な能力やスキルを持った人材との連携が挙げられます。外部人材が持つ知見や経験を活用しながら、新たな発想でビジネスを切り拓いていくことが求められるようになってきました。最近は社外取締役の登用や顧問の採用を積極的に実施している企業が増えていますが、これもオープンイノベーションの一環と言えるでしょう。社員だけで成長を目指すという純血主義は、これからのグローバル競争では、時代遅れになってしまうのかもしれません。
日本が世界に誇れる技術は無数に存在しています。特に製造業をはじめとする産業が保有する技術は、日本の経済成長を推し進め、今なお日本が世界でプレゼンスを示す根拠になっています。したがって、これまでは固有の技術や特許などの知的財産は保護することが第一で、諸外国など他者に盗まれてはいけないということで、防御することに躍起でした。しかし、オープンイノベーションの時代においては、むしろ逆に技術やライセンスを開放して、共有化することが奨励されています。むろん情報漏洩リスクなども伴いますから、何でもかんでもフリーにして許容されるというわけではありません。相互に事業成長のためのメリットが確かにあると認められれば、敢えて虎の子である知的財産を開放してみるということです。なかなか簡単にできることではありませんが、世界はこのような潮流になってきているということです。分野によっては、まだまだ一切外には出せないものもあるはずです。しかし、いずれ技術は上から下に流れていくという発想に立てば、思い切って共有化することで、収益力を加速させていくという考え方もできるのではないでしょうか。
今の中国には「大衆創業、万衆創新」というスローガンがあります。誰しもが起業して、イノベーションを起こそうという意味ですが、2014年に李克強首相によって示されました。国からこのような呼び掛けが出されるというのは、中国らしい大胆さであり、またIT・スマホ・電気自動車などの分野で世界をリードするイノベーション大国・中国の現在を象徴していると言えます。そのようなイノベーションの土壌が整備されている中国において、フランスの食品・飲料大手メーカーであるダノンは、上海にオープンイノベーション科学研究センターを設置しました。中国・上海がその場所として選定されたのは、やはりオープンイノベーションに相応しいビジネス環境や質の高い開放度合いに魅了されたからということです。このセンターに在籍する研究者は、主に腸の健康・食品安全と品質・母乳の研究にフォーカスして、研究開発に取り組んでいます。中国企業・大学・栄養専門家などとも連携して、今後中国発のイノベーションを創出すべく、革新的な製品やサービスのリリースを目指していきます。ダノンを好例として、これから外資系企業が中国をオープンイノベーションの実践場としていくことは、ますます増えていくのではないかと思われます。
日本でもお馴染みのアメリカ企業・P&Gのオープンイノベーションの事例をご紹介したいと思います。P&Gを代表する商品に「プリングルス」というポテトチップスがありますが、オープンイノベーションの成功例として、プリントチップスが挙げられます。これはポテトチップスの表面に文字などを印刷したものですが、このアイディアが発案された際、社内の技術だけではリソースが不足しており、実現が難しいという壁にぶつかりました。そこで、社外にソリューションを求めたところ、食用インクジェット技術者が参画できることになり、プリントチップスが誕生することになりました。アイディアはあっても、自社だけでは到底実現できない場合、外部との連携で新たな商品が開発できるというオープンイノベーションの真髄を表しています。ビジネスの様々な局面において突破口が見い出せない時、ブレークスルーの手段としても、オープンイノベーションは有効的であると言えるでしょう。
日本には職人気質のように、ひたすら技術を研ぎ澄ませていくという求道的な精神文化があります。手塩に掛けて育ててきた技術を伝承し、守り抜いていく。そして、そこには他者を一切寄せ付けない頑固な一面もあるように思われます。今回取り上げたオープンイノベーションという概念は、全く真逆の位置にあり、他者と手を組むことにこそ意義があるというものです。日本では競合関係にあっても、海外市場の開拓においては、日系企業の同業者が一緒に組んで事業開発していくという事例もあり、これもオープンイノベーションと言えます。果たしてオープンイノベーションが、日本のビジネス・カルチャーに浸透していくのかどうか。これから次々と成功事例が出てくることが期待されます。Resoryでは世界各国で活躍する様々な業界のエキスパートと強力なネットワークを構築して、海外でのマーケティング・リサーチのお手伝いをさせて頂いております。エキスパートと協業して、インタビューやアンケートなどを通じて、インターネットや既存メディアでは決して入手できない海外の活きた生情報をご提供させて頂くことが可能です。今回取り上げたテーマについても、実際にもっと深い内容や情報をエキスパートから収集することができます。本ブログについて知見を持っているエキスパートから一次情報を聞いてみませんか?気になる方はコチラ(https://resory.jp/contact/)から是非お問い合わせ下さい!皆様からのご連絡をお待ち致しております。