2022.07.23
昨今フードロス(食品廃棄)の問題が声高に叫ばれるようになってきました。これは世界的に提唱されて、各国で推進されているSDGs(持続可能な社会の実現)とも呼応する動きです。食べ物を粗末にしてはいけないと誰しもが小さな頃から家庭で躾けられてきたと思いますが、果たして世の中は捨てられる食品がまだまだ大量に存在しているということです。従来より廃棄される食品は、家畜の飼料などにリサイクルされて、その再利用が図られてきました。そして現在では、リサイクルをもう一歩進めて、「アップサイクル」という新たな取り組みが登場し、トレンドになりつつあります。アップサイクルとは、廃棄される対象物の品質や仕様をアップグレードして、新たな製品として生まれ変わらせることです。まだまだ世界には食糧不足の発展途上国もある中で、片や先進国では、捨てられるはずの食べ物の価値を向上させるという活動が広がってきています。豊かな日本で生まれ育った現代の私たちにとって、食品のアップサイクルは、これから真剣に考えなければならないテーマの一つです。今回の記事では、中国における食品のアップサイクル事例にも触れて、最新のトレンドをご紹介していきたいと思います。
これまでも廃棄物のリサイクルは行われてきました。例えば、空き缶やペットボトルを回収して再利用する、古新聞を新たに紙に再生するなど身の回りにおけるリサイクル活動は、当たり前の世の中になっています。リサイクルは、廃棄物を改めて原料に戻して、また使い直すというのが主旨と言えるでしょう。一方で、アップサイクルは、アップしてリサイクルする、つまり廃棄物に物としての価値を新たに付加して向上させ、再利用するということに主眼が置かれています。単にゴミを削減するだけではなく、より良い物に変えていくという志向が重要なポイントになっています。
数年前に節分の恵方巻が大量に廃棄されるというニュースがクローズアップされました。まだ食べられる物が捨てられてしまうという所謂フードロス問題です。この他にも賞味期限が近い食品や食品の生産工程で不要として使われなかった部位、そして規格外で販売できなかった食品の廃棄など私たちが目にしないところで、まだまだたくさんの食品が捨てられているのです。SDGsの中には、2030年までに小売り・消費レベルでの世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させるという目標があります。いかに捨てることなく、食品を活かすことができるのか。食品のアップサイクルは、世界レベルでフードロス問題を解決する手段として、注目と期待を集めています。よく食パンの耳だけを揚げて、ラスクのように甘く味付けして売っているベーカリーを見かけます。これも身近でシンプルな食品のアップサイクルの一例と言えるでしょう。そして、私たちは家庭の中でも、果物の皮をジャムに漬けたりと、食品のアップサイクルを実践していることがあります。このように個人でも工夫をすれば、様々な食品のアップサイクルが実現できるのではないでしょうか。
中国における食事の習慣は、大勢の人で円卓を囲みます。外食でも家庭でも食べ切れないほどの料理が出されて、食べ残すことは行儀の悪いことではなく、ごく普通に見られる光景です。そして、レストランでは、食べ残した料理を「打包(ダーバオ)」と言って、家に持ち帰ることもよくあります。そのようなカルチャーのある中国で、2013年から「光盤行動」というキャンペーンが政府によって展開されています。「光盤(グアンパン)」とはお皿を平らげる、つまり食べ残さないことを意味します。食べ残すことが当たり前の中国で、光盤行動が打ち出されたことは驚きですが、その背景には、やはりフードロス問題が存在しています。2020年には習近平国家主席によって、飲食の浪費を制止する重要指示が出され、さらに2021年からは「反食品浪費法」が施行されました。この法律によって、大食いや食品の浪費を宣伝する番組やメディアの制作などが禁止され、違反者は罰金を科せられるケースもあります。「世界の胃袋」と言える中国は、地球レベルでの食糧需給に対して、大きな影響力を持っています。だからこそ、中国が国を挙げてこのような活動を奨励していることは、大変意義深いことだと言えるでしょう。
世界最大手コーヒーチェーン店のスターバックスは、売れ残った食品を寄付する「Food Share」というプログラムを2016年に立ち上げました。フードロス問題を解決するため、2021年までに5000万食までその規模を拡大するとのことです。そして、中国においては、コーヒーかすを100%回収利用し、50%以上の食品とミルクを含む飲料で植物性の原料を使用するというスターバックスの中でも最も”グリーン”な店舗を上海に開店しました。2019年スターバックスは、ストローをプラスチック製から紙製に変えるなど既に環境を意識した取り組みを始めていましたが、さらに一歩踏み込んで、提供する食品にもエコな考え方を取り入れたという訳です。この店舗で発生したコーヒーかすは、堆肥処理を行った後、全て農作物や商業施設のガーデニング用有機肥料として再利用されるとのことです。これも本来捨てられるはずの廃棄物が、価値を高めて肥料に変わるという食品のアップサイクルの好例です。また、このグリーン店舗には、コーヒーかすなどの廃棄物を主要材料に用いた芸術創作品が観賞できるスペースも設置されています。食品が芸術品としてアップサイクルする。従来では考えられなかったユニークな発想です。スターバックスでは今後も持続可能な社会の実現のために、グリーン店舗を拡大していくとのことです。
最近中国では「臨期食品」を扱う専門店が急速に増えています。特に上海などの大都市でよく見られます。「臨期食品」とは賞味期限が近くなっている食品のことを指します。先述の反食品浪費法を受けて、これまでなら廃棄されていたような臨期食品が、ディスカウントされて、専門店で集中的に捌かれているということでしょう。今後はさらに進化して、アップサイクル食品だけを扱うようなお店が続々と登場してくることが期待されます。Resoryでは世界各国で活躍する様々な業界のエキスパートと強力なネットワークを構築して、海外でのマーケティング・リサーチのお手伝いをさせて頂いております。エキスパートと協業して、インタビューやアンケートなどを通じて、インターネットや既存メディアでは決して入手できない海外の活きた生情報をご提供させて頂くことが可能です。今回取り上げたテーマについても、実際にもっと深い内容や情報をエキスパートから収集することができます。本ブログについて知見を持っているエキスパートから一次情報を聞いてみませんか?気になる方はコチラ(https://resory.jp/contact/)から是非お問い合わせ下さい!皆様からのご連絡をお待ち致しております。