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2022.04.18

【時代はAIでクライシスマネジメントへ!】ドイツのPAIRSに見る現代の危機管理

テレビや新聞のニュースを見ていると、自然災害、戦乱、暴動など様々な危機が、日々世界のどこかで発生していることを思い知らされます。クライシスマネジメント(危機管理)は国家や企業にとって、常に重要な課題ですが、一方でいかに事前予測して、未然に措置を取れるかということは、難しいというのも事実です。そして、昨今はAIが発達してきたおかげで、これをクライシスマネジメントにも導入する動きが見られるようになってきました。AIの特徴は、何と言っても過去の事象を徹底的に学習して、そこから将来を予測できるということです。ヒトの頭脳では及ばないことも、AIにシミュレーションさせることで、あらゆる解決策のパターンを導き出すことができます。クライシスマネジメントという分野において、まさにAIの活用は打って付けと言えるでしょう。現代の新たなクライシスマネジメントの手法として、今後AIはさらにその応用が進んでいくものと思われます。果たしてAIはどこまでヒトを助けて、クライシスマネジメントで役に立つことができるのか?今回の記事では、ドイツでの取り組みに触れながら、AIとクライシスマネジメントの関係を見ていきたいと思います。

重要性が増すクライシスマネジメント

クライシスマネジメントと似た言葉で、リスクマネジメントという概念があります。これは危機が発生する前において、被害を最小限に止めるために、回避策を講じることです。いわば事前の対策と言うことができます。一方で、近年重要性が増しているクライシスマネジメントは、危機は必ず発生し、あらゆる事柄が機能不全に陥ると想定した上で、初動対応や回避の手を打っておくことと理解されています。突発的に起こる自然災害、予期せぬテロ、そして今回のロシアによるウクライナ侵攻も実行される可能性は低いと見られていましたが、実際には発生してしまいました。このような不測の事態が増えてきている現代においては、事前のみならず、事後対応を考慮した日常的な計画の策定が求められるようになってきています。こうした背景から、既存マニュアルでは対応できない事象に備えるために、AIによるシミュレーションが有効的な手段として、活用されつつあります。

ドイツのクライシスマネジメント・PAIRS

2020年に新型コロナが発生し、世界的なパンデミックの渦中にあります。これも全く誰も予期し得なかった危機の一つです。あれから約2年が経過し、どの国も感染防止と社会経済の停滞を打開するという間で、試行錯誤してきました。欧米諸国や東南アジア、そして日本はウィズコロナに舵を切りつつありますが、中国のようにゼロコロナを堅持する国もあります。そのような中で、ドイツでは、Advance GmbHという組織が率先垂範して、「PAIRS(Privacy-Aware, intelligent and Resilient Crisis Management)」というプロジェクトが始動しました。このプロジェクトでは、広域的なデータ空間の中で、AIを駆使して、危機が発生した当初と様々な行動の反応の両方を予測するということが行われています。AIがいかに有能だとしても、効果的にクライシスマネジメントをサポートするためには、そのアプリケーションが正しく危機状況の変化を捉えていなければなりません。また、プライバシーに配慮しながらも、判断材料となるデータの不足を発生させず、常に最新状態を保持しておくことが求められます。PAIRSにおいては、データのプライバシーを保証しながら、豊富な関連データへのアクセスを可能にする分散型プラットフォーム・アーキテクチャを用いて、これらの課題の解決が図られています。PAIRSは、欧州のデータ流通基盤であるGAIA-Xともオープンインターフェイスを介して統合されており、安全なデータ交換については、国際データ・スペース (IDS) 標準を使用することで保証しています。また、危機に対する個々の行動によるリアクションも、匿名でPAIRSのプラットフォームにフィードバックされるという仕組みが成立しています。PAIRSはまさにAIを中枢に据えて、デジタルにクライシスマネジメントを展開しているというわけです。補足しておきますが、このプロジェクトは、ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWi)からAI Lighthouseプロジェクトとして、約1,000万ユーロの資金援助を受けています。生産・物流・サプライチェーンマネジメント・医療・エネルギー供給の分野にフォーカスし、できる限り早く欧州全土及び世界中での運用を目指しているところです。

PAIRSを動かすAdvance GmbH

先述のPAIRSを動かすAdvance GmbHについて触れておきます。Advance GmbHは、ドイツ人工知能研究センター(DFKI)、連邦技術救済庁(THW)、SICK AG、IBM Deutschl and GmbHなど10社の組織・企業・大学で構成されるコンソーシアム(共同体)の管理を担っています。Advance GmbHでは、データ・ドリブンな新しいビジネスモデルとイノベーションの創出を目指しており、データを通じた収益化・交換・付加価値を生み出すことに重点を置いたコンサルティングと実装に積極的に取り組んでいます。また、2016 年からは国際データ・スペース協会 (ISDA) のメンバーでもあり、IDS 準拠の IT ソリューションを開発してきました。5 年以上の期間を経て、新興のGAIA-Xインフラストラクチャへの迅速な統合も実現しました。 

まとめ

よく日本は危機管理能力が弱いという声が聞かれます。実際のところ、日本は地震や台風といった自然災害が多い国で、この方面での備えには優れている方だと言えるでしょう。しかし、戦乱やテロといった観点では、これまで見舞われたこともなく、今後もその可能性は低いのかもしれませんが、それが却って平和ボケと揶揄される事態に陥らせているのかもしれません。米中の対立やロシア問題など国際情勢の緊張に終わりはなさそうですし、思わぬアクシデントに遭遇するリスクも考えられます。AIという現代のハイテクを包括的かつ横断的に活用して、クライシスマネジメントに取り組むドイツのPAIRSに学ぶべきところは多いはずです。データの把握と分析を制する者こそが、危機を最も上手く克服していくことができる時代です。日本での新たな取り組みにも期待したいところです。Resoryでは世界各国で活躍する様々な業界のエキスパートと強力なネットワークを構築して、海外でのマーケティング・リサーチのお手伝いをさせて頂いております。エキスパートと協業して、インタビューやアンケートなどを通じて、インターネットや既存メディアでは決して入手できない海外の活きた生情報をご提供させて頂くことが可能です。どのような業界であっても、海外トレンドをフォローし、リアルタイムで海外の市場動向を逸早く把握しておくことは、ますます重要になってきています。このような今こそ、Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティング活動のお役に立てられればと思います。海外のマーケティング・リサーチと言えば、是非Resoryまでお気軽にご相談下さい。