2022.03.21
前回のブログ記事でMaaSについて取り上げました。MaaSとは、ITを駆使することにより、交通の利便性を向上させることですが、移動革命或いは交通革命とも言えるでしょう。スマホのアプリを活用して、乗り物を利用したり、ユーザーの移動情報から、交通のビッグデータを収集・解析していくことに応用されています。最も身近な交通手段と言えば、自家用車になりますが、昨今は電気自動車へシフトしていく最中にあります。車そのものが高度に電子化されることによって、移動するインターネットになり、いわゆるIoTの代表格になりつつあります。そして今、日本と同じく自動車大国のドイツでは、こういったモビリティを中心に据えたITインフラ社会の構築に取り組んでいます。ベンツ・BMW・フォルクスワーゲンとドイツ車は日本でもおなじみですが、これらのメーカーは自動車を製造するというハードの領域を越えて、モビリティ・データによる新たな交通社会を開発していくために、ソフト面での充実も図ろうと画策しています。今後日本にとって、一つのヒントになるかもしれないドイツのモビリティ社会の現在について、見ていきたいと思います。
ドイツでは持続可能な社会の実現に向けて、新たなモビリティ社会を作り直すべく、MaaSの更なる構築に着手しています。具体例を申し上げると、ダイムラーとBMWによって、ラストワンマイルでのカーシェアリングのサポートが行われています。また、駐車場での充電から公共交通機関の利用、シェアサイクルまでの一連の交通を統合するMaaSプラットフォームの開発も支援しています。いわゆる「Mobility Data Space」と呼ばれるMaaSを実現していくためのデータ流通基盤が整備されています。これらの支援を受けて、スタートアップ企業が実際にサービスをユーザーに提供しています。例えば、MoovelやReach Nowなどが代表的なMaaSプラットフォームのブランドとして知られています。自動車メーカーの視点に立つと、今後自動車が売れていくためには、魅力的な自動車のリリースだけでは立ち行かなくなるということです。トータル的なモビリティ・サービスも含めたブランド力の更なるブラッシュアップが求められていくということでしょう。自動車というハードだけを作っていれば良いという時代は、どうやら終わりを告げたようです。
ドイツのモビリティ戦略について、自動車サプライチェーンの観点から見ておきたいと思います。冒頭でも触れた通り、自動車という根幹のハードは、脱炭素社会という時代の要請もあって、急速にガソリン車から電気自動車に変わりつつあります。そして、自動運転についても、並行して実現化に向けた実験が行われています。ドイツの主要な自動車部品サプライヤーと言えば、ボッシュ、コンチネンタル、ZFなどが挙げられます。これらの企業は、電気自動車の生産・開発においても、重要なキープレーヤーとなっています。センサーやレーダーといった電気自動車におけるキーパーツを設計・開発することはもちろんですが、こういった新たな部品がデジタル・プラットフォームと融合するようになっていることに着目しておかなければなりません。つまり、これがデジタル・トランスフォーメーション(DX)の一環であり、ドイツのモビリティ産業がMaaSといったソフト・コンテンツを強化していく根源になっているわけです。このように自動車部品サプライヤーは、新たな役割も担うことによって、ドイツのモビリティ社会の構築に様々な機会を提供しています。ドイツ政府もIndustry4.0戦略のもと、デジタル・サプライチェーンの開発を積極的に後押ししていることから、企業とのシナジー効果が発揮されています。ハードとソフトの双方の開発が足並みを揃えてこそ、これからの時代にマッチしたモビリティ社会を作り上げることができるのでしょう。
ドイツの新たなモビリティ社会を語る上で、もう1つ重要な要素がCatena-X(カテナ-X)です。これは自動車のバリューチェーン全体でデータを共有するというネットワークであり、ドイツが主導して立ち上げられました。2021年3月にメルセデス・ベンツとBMWによって設立され、自動車メーカーのみならず、IT・通信やアプリベンダーなど様々な企業が参画しています。自動車を中心にして、これから迎える新しいモビリティ社会に関わるプレーヤーが、標準化されたデータへのアクセスを通じて、効率的で持続可能な社会の実現を目指していきます。そのためには、自動車産業を取り巻く脱炭素化など地球環境保護にも配慮した取り組みが欠かせず、その意味からITや通信といったサービス業も重要な役割を担うであろうとの意図があると考えられます。Catena-Xのポイントは、品質管理・物流・メンテナンス・サプライチェーン管理・持続可能性です。これらを高度なレベルで実行していくためには、やはり今の時代はITやデジタル化対応は必要不可欠です。Catena-Xの取り組みは、MaaSと表裏一体であり、相互が歯車のように噛み合って、新たな価値が創造されていくはずです。環境意識の高い欧州は、いち早く電気自動車への脱却を目標としています。製造業とデジタル産業が二人三脚で、モビリティ社会の未来を切り拓いていくことに期待が持たれます。
世界では、物(ハード)とサービス(ソフト)の一体化が、ますます加速しているように思われます。今回取り上げたドイツのモビリティ社会の実状は、近い将来、日本との大きな違いを実感することになるのではないでしょうか。中国もそうであるように、新モビリティ社会の要は、何と言っても電気自動車が主役になります。ここから各種各様の移動サービスが派生してくるのではないでしょうか。商用車によるビジネス物流も同じであろうと想像されます。日本も負けずにモビリティ革命の到来を望んで待ちたいところです。そして、こういった世界の潮流をフォローしていく為にも、日頃から海外のビジネス事情をリサーチして、状況を把握しておきたいところです。Resoryではそのようなお手伝いをさせて頂くことが可能です。世界各国で活躍する業界エキスパートと強力なネットワークを構築しています。インタビューやアンケートなどお客様のご要望に応じた調査手法によって、インターネットや既存メディアでは決して入手ができないオリジナルの活きた生情報をご提供させて頂くことができます。マーケティング・リサーチにおいては、リアルタイムで海外の市場動向をいち早く把握しておくことが、何よりも重要です。コロナ禍で自由な海外渡航が、まだまだ制限されている今こそ、是非Resoryをご活用頂いて、他社との競争差別化の一助として頂ければ幸いです。海外のマーケティング・リサーチと言えば、Resoryまでお気軽にご相談下さい。