2022.01.14
昨年来、産業界にとって2つのモノ不足が悩ましい種となっています。1つは半導体で、過去このブログの中でも何度か触れました。そして、もう1つが電力の不足です。日本にいると、あまりそのような感覚はありませんが、世界的に見ると、電力の供給が逼迫しています。昨年中国で電力不足が話題になったことも記憶に新しいと思います。「産業の血液」といわれる電力ですが、時代は脱炭素化社会に向けて、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーへのシフトが進みつつある状況です。石炭火力による発電を抑制して、クリーンなエネルギーへと転換が始まっていますが、一方で、電気自動車やスマート家電などの登場により、新たな電気製品の普及に伴う電力供給のニーズはますます高まるばかりです。半導体が無ければ、電気製品は作れませんし、電力供給も無ければ、電気製品は稼働しません。これら2つのモノ不足は、今後も世界経済の動向を左右する重要なファクターです。特に中国とインドという世界の2大人口大国の需給バランスが、世界にもたらす影響は大きいと言えるでしょう。今回は世界の電力不足を取り巻く状況について、見ていきたいと思います。
電力供給の柱とも言える石炭火力発電にブレーキが掛かっています。これは石炭の燃焼で二酸化炭素などの温室効果ガスが放出されることにより、地球環境がダメージを受けるためです。世の中はこのような石炭火力発電などを抑制するという脱炭素化社会に向けて、再生可能エネルギーへと大きく舵を切っている最中にあります。昨年イギリスで開催されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)では、二酸化炭素の排出量を削減するなどして、気温上昇を抑制していくことが、世界レベルで取り組んでいく目標として明確に定められました。また、アマゾンなど民間の大手企業もカーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギーの電力比率を向上させていくことなどに取り組んでいます。このような時代の流れから、今後も石炭火力による発電量の減少は必至の状況で、電力の供給不足が慢性化する可能性さえ懸念されています。
石炭火力に代わるエネルギー源として、太陽光や風力による発電といった再生可能エネルギーの持続的な創出が模索されています。しかし、これらのエネルギーは、その出力が気象条件に左右されるという弱点も抱えています。例えば、昨年ヨーロッパでは天候不順が続いたことから、十分な発電量が得られなかったという事態を招きました。その結果として、今度は再生可能エネルギーの不足分を天然ガスで補填するという動きになり、天然ガスの価格が高騰することになりました。石炭火力発電を抑えていくことは、極端に言うと、その稼働を停止すればよいだけで、容易かもしれません。しかし、代替エネルギーによって十分な電力供給量を確保していくことは、まだまだ克服すべき技術的な点もあり、世界的に共通する課題と言えるでしょう。今後、技術革新によって、様々なクリーンエネルギーの常時供給体制が、整えられていくよう望まれるところです。
さて、冒頭でも触れた中国の電力不足について、触れておきたいと思います。中国の電力不足は、昨年の夏から秋にかけてクローズアップされました。例年より残暑が長引いて電力需要が膨らんだこと、脱炭素に向けて主力の石炭火力発電を締め出していることなどから、各地で計画停電が相次ぎました。しかし、中国の場合は、電力供給能力の欠如による純粋な意味での電力不足ではなさそうです。石炭が足りていないことから、火力発電が稼働できないという見方もあったようですが、実際のところは、国内で石炭を十分に調達できる状況にあります。むしろ今回の計画停電は、脱炭素化社会に向けた国家としての目標を着実に実行していく中で採られた措置と言えるでしょう。2021年から始まった中国政府の第14次五カ年計画では、2025年までの5年間で13.5%の省エネを達成することが目標として掲げられています。この省エネ目標は毎年12月に達成度合いが評価されますが、昨年はコロナからの景気回復もあって、省エネ目標の未達が懸念されたという背景に着目しておかなければなりません。中央から地方政府に課せられる目標は必達であり、これは中国政治の真髄です。したがって、物理的な電力不足ではなく、石炭火力発電を止めることで、文字通り計画的に電力供給をストップさせたと見る方が正しいでしょう。裏を返せば、いつでも潤沢な電力供給の再開は可能なわけで、この問題は徐々に解消していくと思われます。
もう1つの人口大国・インドの状況はどうでしょうか。インドでは電力構成に占める石炭火力発電の割合が70%と言われています。昨年10月には、国内の135ある石炭火力発電所のうち、最大63カ所で石炭の在庫が2日以下、17カ所で在庫ゼロの水準にまで落ち込むという危機的な状況に見舞われ、大規模な電力不足が発生することになりました。これは新型コロナによる混乱やモンスーンの大雨で、石炭の採掘や輸送に影響が出たことにも起因しています。もともとインドは電力供給が不安定なこともあり、急速な経済成長が進む中にあっては、より一層いかに電力を確保していくかが急務となっています。中国と比べても、インドはあらゆるインフラがまだまだ未熟な段階にあります。脱炭素化の流れを意識する一方で、伝統的な石炭火力による最低限の発電量確保にも、しっかりとした手当てが必要と言えるでしょう。
電気や水を無駄使いしないこと、節電や節水を心掛けること。私たちは小さな頃、このように学校や家庭で躾けられてきたと思います。そして今、地球レベルで節電の必要性に迫られているのかもしれません。このまま石炭火力発電を継続すれば、おそらく昨今の電力不足問題は起こらなかったでしょう。しかし、地球環境を保護していくためには、脱炭素化が必須であり、今さら石炭火力発電に後戻りするわけにはいきません。再生可能エネルギーが、石炭火力のポジションに取って代わる日はいつ頃になるのでしょうか。それは私たち一人一人の意識と行動に掛かっています。Resoryでは世界各地でマーケティング・リサーチ業務を行っています。様々な市場や業界動向について、ワールドワイドでマーケティング調査を展開しています。世界各国で活躍するエキスパートとの協業により、海外現地のリアルな状況をレポートにまとめて、お客様にご提供させて頂いております。Resoryがご提供させて頂くのは、インターネットやメディアでは決して入手のできない海外の活きた生情報です。様々な業界における海外のリアルタイムの状況です。コロナ禍で自由な海外渡航が、まだまだ制限されています。そのような今こそ、Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティングの一助として頂ければ幸いです。海外のマーケティング・リサーチと言えば、是非一度Resoryまでお気軽にお問い合わせ下さい。