2022.01.08
今ヒトと一緒に仕事をする「協働ロボット」に注目が集まっています。英語ではcobot(collaborative robot)とも呼ばれます。従来ロボットと言えば、工場などでヒトができない作業に従事したり、ヒトの命令や指示に従って働くというヒトを補助する存在でした。しかし、時代の流れは変わり、今やヒトとロボットが共存して、力を合わせてワークするという新しいスタイルが、ポピュラーになりつつあります。日本では少子高齢化社会の壁が立ちはだかり、人手不足が叫ばれて久しい状況です。ロボット無しでは成立しない産業や企業もたくさんあります。そのような中、協働ロボットはヒトに従うのではなくて、ヒトと同じ立場に立って仕事をこなし、人手不足の解消のみならず、日本の産業の生産性向上にも大きく貢献しています。これから協働ロボットは、特に製造業を中心として、ますます欠かせない存在になっていくでしょう。今回の記事では、協働ロボットの最前線について、見ていきたいと思います。
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冒頭でも触れた通り、協働ロボットが増えてきている背景には、日本の深刻な人手不足があります。ある調査によると、昨今は中小企業だけではなく、大企業においても、人材確保が難しくなってきているようです。特に製造業においては、単純作業や過酷な労働のイメージから、求人を出してもなかなか人が集まらず、非常に悩ましい経営課題となっています。今後もこのような状況は続いていくものと予想され、企業にとっては抜本的な対策が求められています。また、16歳以上65歳未満の生産年齢人口の減少も要因の一つに挙げられます。日本の生産年齢人口は、1995年をピークに減少を始め、総人口についても2008年を境目に減少に転じています。協働ロボットは、まさに日本の産業にとって、人手不足という課題を克服してくれる救世主と言えるでしょう。そして、協働ロボットを導入することで、人件費という大きな固定費を削減するとともに、生産性を向上させていくことが、企業にとって達成すべき目標となります。世界的に見ても、日本企業の生産性の低さは顕著であり、効率を高めていかなければ、産業の衰退化は避けられないかもしれません。
これまでの産業用ロボットは、自動車産業や機械産業など比較的大きな製造ラインが活躍の舞台でした。ロボットは、安全を確保するために柵で囲われて、ヒトの作業ラインとは分離された形で稼働していました。このような環境は、単一のモノを繰り返し生産する作業には向いていると言えますが、様々な種類のモノを生産したり、生産量が変化する場合には、柔軟な対応が難しいです。そこで、技術の進化によってロボットの小型化が実現し、さらに法規制の緩和などとも相まって、ヒトとの共同作業が可能な協働ロボットが登場することになったわけです。協働ロボットの特徴は、小型・軽量・導入の容易さです。価格的にも従来の産業用ロボットと比較してリーズナブルであることから、中小企業でも導入が進んでいくものと大いに期待されています。
さて、協働ロボットの導入加速に向けて、日本における取り巻く環境について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
これまで日本の規制では、80W以上のロボットは柵で囲って、ヒトの作業空間から分離させることが必要とされてきました。しかし、2013年12月の規制緩和によって、一定の条件を満たせば、80W以上のロボットでもヒトと同じ作業スペースで仕事をすることが可能になりました。これによって、柵の設置やスペース確保のための諸コストも削減でき、より柔軟な生産ラインを組むことが実現できます。
ロボットがその機能を全うするためには、アームやセンサーといったハードを取り付けて、これらが作動するようにソフトウェアをプログラミングする必要があります。従来の産業用ロボットでは、このプログラミング作業に大きな負担が発生し、ロボット導入のネックになってきました。しかし、協働ロボットでは、プログラミングや生産ラインへの導入の手間が省力化され、大掛かりな実装期間も短縮化されています。この協働ロボットの取り入れ易さこそが、普及の加速につながっていると言えるでしょう。
中小企業が協働ロボットを導入するにあたり、日本では様々な支援制度が設けられています。経済産業省によるロボット導入実証事業では、事業者に対して、ロボットの導入実証に要する費用の一部を補助しています。また、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制などの優遇税制もあり、中小企業にとっては、ロボットの導入を前向きに検討するきっかけとなっています。
2020年からの新型コロナの流行によって、私たちの仕事や生活の様式は一変しました。いわゆる三密と言われるヒトの密集や密接を回避することが、常に要請されています。モノづくりの現場でも、新型コロナの感染防止は徹底的に行われていますが、なかでも多数のヒトが生産ラインで働く労働集約型の工場では、その対策が難しいという現実もあります。そのような環境の中、協働ロボットは出番が回ってきたと言うことができるでしょう。ヒトとヒトとの接触を避けるべく、協働ロボットがそのポジションに配置されれば、これまで通りの生産工程を維持することができます。奇しくもコロナ禍によって、協働ロボットの価値はさらに高まることになり、今後の導入に拍車を掛けることになるのではないでしょうか。
産業用途として導入が進み出した協働ロボットは、やがて一般の日常生活にも溶け込んでくるのかもしれません。AIやITと共に、ロボットもまた日々進化を遂げていくことになるでしょう。果たして協働ロボットは、どこまでヒトと同じレベルに立って仕事ができるのか、そして将来ヒトを超えていく存在になり得るのか?もしかしたら、ヒトがロボットに従うことがあるのかもしれず、今後のロボット産業の大いなる発展に期待が膨らみます。そして、高度化していくロボットといかに関係を構築していくかは、新しい経営課題として、私たちも考えていかなければなりません。Resoryでは世界各地でマーケティング・リサーチ業務を行っています。今回取り上げたロボット業界が、世界ではどのような状況にあるのかなど、様々な市場や業界のマーケティング調査をワールドワイドで展開しています。世界各国で活躍するエキスパートと協業して、海外現地のリアルな状況をレポートにまとめて、お客様にお届けさせて頂くことが可能です。Resoryが提供させて頂くのは、インターネットでは決して入手できない海外の活きた生の情報です。コロナ禍で自由な海外渡航が、まだまだ制限されています。そのような今こそ、是非Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティングの一助として頂ければ幸いです。海外のマーケティング・リサーチと言えば、Resoryまでお気軽にお問い合わせ下さい。