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2021.11.29

【次世代半導体材料GaNとSiCとは?】日本の底力・半導体材料の最新トレンド

今年に入って、世界的な半導体不足について、頻繁に報道されていることは、皆さんもよくご存じだと思います。半導体をより必要とするデバイスが、それだけ増えてきている世の中だということでしょう。スマホ・電気自動車・車載装置・データセンターなど、ますます便利な未来に向かって、これから半導体のニーズはさらに高まっていくと考えられます。そして、半導体そのものも進化し続けていることに注目しておきたいところです。半導体が搭載されるデバイスのスペック要求が高度になるに連れて、半導体も一層の高性能が求められることになります。今回の記事で取り上げるGaN(窒化ガリウム)半導体もその一つです。いわゆる化合物半導体と呼ばれるカテゴリーに属しますが、従来の半導体を超える特性を持ち、前述の次世代デバイスにおいて、カギを握っている半導体です。GaN半導体の市場動向や主要プレーヤーにも触れながら、解説していきたいと思います。

GaN半導体とは?

そもそも半導体の歴史は、今から70年くらい前の1950年頃まで遡ります。半導体が誕生した当初は、ゲルマニウムがその材料として使用されていました。その後、シリコン(Si)が特性的に優れているとして、現在に至るまで半導体のメイン材料として用いられてきました。そして今、このシリコンに代わって次世代の半導体材料として着目されているのが、GaN(窒化ガリウム/ガリウムナイトライド)やSiC(炭化ケイ素/シリコンカーバイド)なのです。これらの材料による半導体は、シリコン製では実現できないパフォーマンスが可能ということで、大いに期待されています。GaNやSiCを使った半導体は、単体のシリコン製に対して、化合物であることから、「化合物半導体」と呼ばれています。また、バンドギャップが広いことから、「ワイドバンドギャップ半導体」とも称されます。シリコン製と比較した場合、破壊電界強度が大きいという性質があり、シリコン製と同耐圧を実現しようとした場合、耐圧層を大幅に薄くできるというメリットがあります。

GaN半導体の優位性

材料自体の性能指数でシリコンと比較した場合、GaNは1130倍、SiCは440倍と言われ、圧倒的な高性能を誇っています。これは高耐圧化・高耐熱化・小型化・高速化が可能であることを意味し、現在シリコン半導体からGaNやSiCといった化合物半導体に置き換えることで、電子デバイスのさらなる高精度化の実現に向けて、日々技術開発が進めらています。具体的には、GaNは1kW以下の電源で、小型化要求が強い用途での採用が期待されています。例えば、最近市場が急速に拡大しつつある携帯電話の5Gにおいて、基地局の電源として、GaNによるデバイスが有効であるとされています。また、スマホやノートパソコンなどの充電器では、常に小型化や急速充電のニーズが高いため、GaN半導体が大きく貢献することになります。一方、SiCは高耐圧・大電流が求められる分野で有利とされています。例えば、モーターの駆動や発電システム、電気自動車などで普及していくことが期待されています。新しい半導体なくして、新しいデバイスも生まれないと言っても、過言ではないかもしれません。

GaN半導体の市場動向

市場調査会社のTrendForce社の予測によると、2021年のGaN半導体市場は、前年比で73%増の8300万ドルにのぼるとされています。今後も年平均78%の成長率で市場が大きく拡大し、2025年には8億5000万ドル規模に達すると見込まれています。一方で、SiC半導体市場の方は、年平均38%の成長率で、2025年には33億9000万ドルまで市場規模が拡大すると予測されています。この驚異的な市場拡大は、前述の通り、スマホ充電器や電気自動車といった次世代デバイスに対する需要の高まりが牽引しています。まさに半導体の世界でも革新が起こっていると言えるでしょう。

(出典)TrendForce:GaN半導体(左図)とSiC半導体(右図)の市場予測 

GaN・SiC半導体の主要プレーヤー

さて、ここでGaNとSiC半導体関連の主要プレーヤーを見ていきたいと思います。

Cree(クリー)

アメリカのSiC半導体専業メーカーで、1987年に設立。原材料からデバイスまでを一貫生産しています。SiCシリコンウエハーの市場シェアは60%で圧倒的な地位にあります。また、SiCによる青色LEDを世界に先駆けて製品化に成功し、Creeと言えばLEDというイメージがあるほどです。

Infineon Technologies(インフィニオン)

Si、GaN、SiCによる半導体をラインナップするドイツのメーカー。今年9月にはGaN半導体の第2世代Gen2をパナソニックと共同開発・製造する契約を締結したと発表しました。両社はすでに2015年にGaN半導体の第1世代Gen1を共同開発しています。今回、さらなる高性能化を目指して、新たなGaN半導体開発のフェーズに入っていくことになります。

Qorvo(コルボ)

アメリカの大手半導体メーカーで、GaN半導体も手掛けています。NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機やアメリカの民間宇宙企業スペースX社のロケットなどにも同社の製品が採用されています。

ローム

日本の大手総合半導体メーカーで、京都に本社があります。2018年6月にパワーデバイスの世界的リーディングカンパニーであるGaNシステムズ社と提携。またSiC半導体の開発・製造にも力を入れており、2010年には世界で初めてSiCトランジスタの量産を開始しました。

サンケン電気

日本を代表するパワーエレクトロニクスの専業メーカー。GaN、SiC両方のパワー半導体開発に取り組んでいます。

その他の主要プレーヤー

新電元工業が大容量且つ高速安定動作を可能にするGaNパワーモジュールを開発。また、GaN基板では三菱化学・住友電気工業・サイオクスといった企業の市場シェアが高く、日本の材料・素材産業の強さがうかがえます。

まとめ

数年前に日本は韓国との外交を巡って、日本製の半導体材料を輸出することに制限を掛けたことがあります。また、直近ではアメリカ製の半導体製品の中国への禁輸や台湾の半導体ファウンドリー大手TSMC社の動向が米中関係に影響を与えかねないことまで憶測される状況になっています。半導体や半導体材料は高度な技術が詰まった工業製品です。いかに自分たちのものにして、有利なビジネス展開をしていけるかということは、今後その国の将来の経済発展や国際政治におけるプレゼンスにも大いに関わってくるでしょう。かつて日の丸半導体と言われた日本も、この数十年は経済停滞とも相まって、相対的に地位が低下してしまったようです。しかし、悲観することなかれ、日本はこの分野においては底力を持っており、日本政府も半導体産業の強化・育成に向けて動き出しています。輝かしい日本の半導体産業の復活を願ってやみません。これからGaNやSiC半導体分野での日本企業の飛躍が期待されます。Resoryでは世界各地でのマーケティング・リサーチを行っています。海外の企業や詳細な市場動向をターゲットにして、お客様のニーズに基づいたカスタマイズでのリサーチ業務を展開させて頂いております。世界各国で活躍する様々な業界のエキスパートと強力なネットワークを有していることが最大の強みです。エキスパートと協業して、海外での現場調査を行い、お客様が求められている調査レポートをご提供させて頂くことが可能です。コロナ禍で自ら海外に渡航してリサーチすることがまだまだ困難な状況にあります。そのような今こそ、是非とも弊社をご活用頂いて、皆様の海外ビジネスのお力になれればと思います。海外のマーケティング・リサーチと言えば、是非一度Resoryまでお気軽にご連絡下さい。