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BLOG 2021.07.30

ニューノーマル時代に求められるタイの家電製品業界の調査と今後の展望

タイの電気機器製造業は50年以上にわたって発展しており、輸出国として世界でトップの地位を確立しています。しかしニューノーマル時代の到来により、家電製品に対する消費者の購買行動に変化が生じ、生産台数や売上高に変動が見受けられました。そこで今回従来の家電製品の情報のみならず、近年におけるタイの家電製品業界の現状から、ニューノーマル時代に適応した各大手家電メーカーの販売動向および消費者の行動変容の調査結果を紐解いていきます。

タイの家電製品業界の海外調査と現状

2019年時点でタイには440の家電製品メーカーがあり、主要な家電製品メーカーには、多国籍企業であり世界を牽引する三菱、SONY、東芝、LG、サムスンなどのブランドが存在します。また、2018年のデータによれば、タイの家電製品の総生産の35-40%は国内市場で消費され、60-65%は年間総輸出額で一位を誇ったASEANを始めに、日本、米国、EU、中国に輸出されており、タイの家電製品において上位5つの輸出市場には日本が含まれています。世界最大の輸出国であるタイは、洗濯機などの家庭用家電製品(白物)の生産・輸出拠点であり、2018年にはエアコンとともに世界の輸出国の中で第二位を獲得しました。しかし、2020年は新型コロナの影響による景気後退とその後の個人消費力の低下により、家電製品の生産台数および国内消費が減少し、さらに住宅市場の低迷に伴い、ほとんどの商品群、特に洗濯機、炊飯器の売上高に悪影響を及ぼしました。中でも洗濯機が最大の落ち込みを記録したのは、主に米国がタイの洗濯機の輸入を制限し、2018年2月以降市場シェアが縮小していることが起因しています。一方、気温の上昇と新型コロナ下で推奨された在宅勤務の増加が貢献し、冷却装置の売上が押し上げられたことから冷蔵庫およびエアコンの売上高は増加しました。

タイ国内における家電市場の需要

タイの世帯で保有率が高い家電製品は、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、扇風機、テレビ、およびアイロンであり、総世帯数の30%以上を占めています。また、2020年のタイの家電市場は690億バーツの価値があるとされ、家電製品別ではエアコンが総額271.8億バーツ、冷蔵庫と洗濯機はそれぞれ130億バーツ、冷凍庫は47億バーツと、エアコンが他の製品と差をつけて首位となりました。さらに2019年のタイの家電市場の調査では、最も売れ行きの良い家電はエアコンと空気清浄機であり、流通市場全体の39%を占めています。エアコンと空気清浄機に続き、冷凍庫および冷蔵庫などの家電製品も人気を博しており、常夏のタイの国内需要は依然として冷却機器に支えられていることが判明しました。

さらにタイの人気の電化製品では、24時間エアコンをつけられない学生や労働者が、代替手段として小型のポータブルクーラーを利用する他、持ち運びが簡単で時間を節約できるスチームアイロンが主婦や大学生の間で売れ筋商品となっています。また、調査によると、新型コロナ後のタイのミレニアル世代の3分の1近くが生活の70%を自宅で過ごしており、この調査結果は他の世代と比較して最も高く、在宅を好むこの世代は在宅に適した製品の需要を高めており、電化製品市場のプラス要因となっています。

各主要メーカーの家電市場戦略

各家電メーカーの販売戦略の調査によると、タイの主要なエアコンブランドである三菱、Haier、LGは、2020年は新型コロナに関連して販売が落ち込んだものの、2021年にはタイのエアコン市場が再び成長すると予測して、マーケティング予算を増やして新製品の発売を計画していることを明らかにしました。 2021年にタイで50周年を迎え、ルームエアコン、ウォーターポンプのカテゴリーでは、引き続き1位のシェアとトップブランドを維持する三菱は、三菱電機の業務用エアコンであるMr.Slimの新モデル「ECO EYE INVERER XTシリーズ」を開発しました。この新商品は室内の動きを検知するセンサー「ECO EYEセンサー」を搭載しており、今後も成長の可能性を秘めたセグメントである業務用エアコンの販売・成長の推進に取り組み、販売代理店でこの新シリーズを市場に導入します。

また、同社はITシステムを強化をし、全国のサービスセンターと連携および高水準のアフターサービスに重点を置くとともに、サービス速度を向上させて全国の顧客満足度を高める方針です。 韓国のLGは、ウイルスおよび大気汚染物質PM2.5に対応した20の新しいモデルのエアコンを発売し、全国の小規模ディーラーネットワークを強化しながら、東南アジア最大級のECプラットフォームであるLazada、タイの流通大手Central Groupと中国の電子商取引大手である京東(JD.com)の合弁により手がけられたタイのネット通販サイトJD Central、タイの通販サイトであるShopeeなどのeコマースプラットフォームを介してエアコンの販売を開始し、オンラインによる集客を実現します。 また、洗濯機および冷蔵庫で12年連続タイで信用されているブランドの東芝は、2020年下半期に新製品を市場に浸透させるため、タイの家電業界で初となるマルチプラットフォームを通じて、洗濯乾燥機、空気清浄機、その他多くの小型家電製品など、50を超える新製品を発売しました。

さらに、家電市場のリーダーおよびタイの冷蔵庫市場でNo.1のリーダーであるSamsungは、2021年に生活家電の新サブブランド「BESPOKE」を立ち上げました。調査によればミレニアル世代の79%がユニークな製品を切望していることから、新サブブランドの立ち上げに伴い、ライフスタイル商品で「ミレニアル世代」をターゲットに、カスタマーセントリック(顧客中心主義)のコンセプトに基づく新しいビジョンも発表しました。 大手家電メーカーの戦略を分析すると、ニューノーマル時代の消費者に適応するため、実店舗のみのならずネット通販とバランスを取る戦略や、顧客中心の戦略に切り替えて顧客のニーズを理解することに焦点を当てる企業、人々のニーズを満たす家電製品を開発し、新製品を次々市場に投入する企業が多いことが判明しました。

今後の家電業界の見通し

今後3年間、家電製品の国内販売量は、さらなるエアコンの需要の増加が見込まれ、冷却部門におけるタイの家電製品の製造業は成長の一路を辿ります。家電市場はまた、モノのインターネット(IoT)を活用した新しいデバイスのリリース、ディストリビューターによる定期的な販売促進、およびユーザーが購入決定を行うための製品情報への幅広いアクセスを可能にするオンライン販売プラットフォームの台頭によって後押しされていきます。 今回の調査では、タイの家電製品業界の情報をお届けしましたが、同業界に限らず様々な市場および業界動向のリサーチが可能です。