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2022.02.27

【インテルが台湾TSMCに製造委託!】インテルの新たな戦略IDM2.0

前回のブログ記事で、台湾ファウンドリー(半導体製造受託会社)大手TSMCの日本進出について触れました。その後、自動車部品大手のデンソーが、TSMCとソニーによる新合弁会社に400億円を出資することが報じられました。半導体不足によって、自動車の生産が落ち込んでいます。これから供給の見通しが改善したとしても、世界的に半導体を奪い合う構図は続いていくと見て、デンソーは戦略的に出資を決めたと考えられます。出資を通じて、TSMCへの関与を深めて、恒久的な半導体の確保を目指していくことになりそうです。また、新合弁会社の投資額は、当初の8000億円から9800億円にまで引き上げられることになりました。生産する半導体の回路線幅も22ナノ~28ナノに加えて、12ナノ~16ナノもラインナップに入ることになり、より高精度な製品も製造できるとしています。TSMCの強みは、何と言っても他社がまだ追いついていない5ナノナノメートルという超微細な回路線幅の半導体を量産できることにあります。そして、半導体業界の巨人であるアメリカのインテルについても、一部の製品をTSMCに製造委託することが、すでに発表されています。インテルは設計から製造まで一貫生産するいわゆる垂直統合型のメーカーですが、ここに来て競合とも言えるTSMCに製造を外注するという大胆な手を打ってきました。インテルの狙いは一体何なのか? TSMCへの依存度と期待値は、いよいよ本格化してきたと言えそうです。

インテルの宣言・IDM2.0への移行

アメリカのインテルは、言わずと知れた世界の半導体業界をリードするトップ・メーカーです。設計から開発までを一貫して自社で行う垂直統合型のビジネスモデルを採用してきており、これはIDMと呼ばれています。そして、昨年3月に、従来のIDMを進化させたIDM2.0という新たなモデルへ移行することを宣言しました。この宣言の中で、インテルは3つの指針を示しています。①プロセッサーについては、自社での製造を継続し、新工場を建設して生産能力を増強していく ②同時に他社への製造委託の度合いを大きく引き上げていく ③インテル自身も他社の製造を受託するインテル・ファウンドリー・サービス(IFS)を独立事業として開始するの3点です。インテルは長年にわたって半導体の微細化開発において、壁にぶち当たっていると言われています。今回の宣言による改革は、内部体制を強化しつつも、外部にも一部の製造を任せることで、より柔軟で強さを発揮できる組織体制を構築し、設計・開発業務へも注力していけるようにとの狙いがあると思われます。この中で③のファウンドリー事業への進出は、予想外の発表であり、関係者に驚きが広がりました。ファウンドリーの分野では、TSMCなど一定の専業プレーヤーがすでに存在しており、まさかここにインテルが切り込んでくるとは、誰も想像し得なかったことです。

インテルがTSMCに製造委託へ

昨年7月、インテルは新型のGPU(グラフィック処理装置)2品目について、5~6ナノメートル(ナノは10億分の1)のプロセスで、TSMCに対して製造委託することを発表しました。さらに2022年にTSMCが3ナノメートルのプロセスを立ち上げた後は、サーバー用の先端CPU(中央演算処理装置)の製造もTSMCに外注すると見られています。もし、これが実現するとすれば、アップルを抜いて、インテルがTSMCの最大顧客になる可能性があります。パソコンやサーバー向けのキーパーツであるGPUやCPU等の開発で、インテルは常に先頭を走り続けてきました。そんなインテルが、微細化プロセスの開発で足踏みすることは許されません。インテルでさえ難しい超微細プロセスの半導体については、目下そのトップ・メーカーであるTSMCに製造委託する方が、得策であるとの判断でしょう。今はTSMCに製造委託して時間を稼ぎながら、自社の技術もしっかりと磨いていき、やがては自分のものにする。そんな強かなインテルの戦略が垣間見える気がします。

ファウンドリー会社の買収を目論むインテル

IDM2.0の3本の矢の1つであるファウンドリー事業について、インテルはアメリカのアリゾナ州に200億ドルを投入して、ファウンドリー用工場を2棟建設することで検討に入っています。また、ドイツが有力候補地として挙がっていますが、欧州にもファウンドリー工場を立ち上げる計画があるようです。さらに、ファウンドリー専業メーカーのM&Aにも着手していると伝えられています。最近ではファウンドリー業界7位のイスラエルのタワー・セミコンダクターの買収交渉が、最後の大詰めに入っていると報じられました。昨年には、業界4位のアメリカ大手ファウンドリーであるグローバルファウンドリーズの買収を試みましたが、失敗に終わりました。インテルはファウンドリー事業の買収を通じて、そのノウハウと顧客を獲得し、商品ラインナップを拡充して、一気にシェアを拡大しようと目論んでいるものと考えられます。ファウンドリーを含めた半導体業界の熾烈な競争に打ち勝っていくためには、規模の拡大は欠かせません。独自のコアな領域は強化し、他社でもやれる汎用的な製品は外注を起用する、そして自社に無いものは積極的に取り込んでいく。インテルのIDM2.0戦略は、あらゆる角度から選択と集中を進めた内容と言えるでしょう。

まとめ

パソコンが一般に広く普及を始めた1990年代に「ウィンテル」という言葉がよく聞かれました。マイクロソフトが開発したウィンドウズというソフト、そしてそれを駆動させるハードであるインテルの半導体によって、世界の情報通信機器はコントロールされているという意味です。インテルは、当時セット(電子機器)の中で主流であったパソコンのエンジンとも言える半導体を一手に開発・製造することで、半導体製造の川上から川下までの全てを押さえることに成功しました。それから市場のニーズは変わり、今やパソコンからスマホや電気自動車などに主役が取って代わりつつあります。半導体製造も垂直統合型から分業体制に進んだ結果、TSMCのようなファウンドリーが力を付けてきて、表舞台に登場することになりました。半導体業界は日進月歩と言われますから、今はインテルのTSMCへの製造委託がサプライズに映っても、将来から見れば、普通のことのように捉えられるかもしれません。半導体業界では、今後も様々な合従連衡や業界再編が繰り返されていくものと思われます。新たなプレーヤーの出現にも期待したいところです。Resoryでは世界各地でマーケティング・リサーチ業務を行っています。今回取り上げた半導体などのハイテク産業やニュービジネスはもちろんのこと、あらゆる業界に至るまで対応させて頂いております。Resoryの強みは、世界各国で活躍する業界エキスパートとの強力なネットワークと協業体制を構築していることです。インタビューやアンケートなどを通じて、インターネットや既存メディアでは決して入手ができない海外の活きた生情報をご提供させて頂くことができます。マーケティング・リサーチにおいては、リアルタイムで海外の市場動向をいち早く把握しておくことが、何よりも重要です。コロナ禍で自由な海外渡航が、まだまだ制限されている今こそ、Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティング・リサーチの一助として頂ければ幸いです。海外のマーケティング・リサーチでお困りの場合は、是非一度Resoryまでお気軽にご相談下さい。