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2022.02.02

【世界で加速するバッテリーのリサイクル!】電気自動車の普及を追随する車載電池の回収

電気自動車にスマートフォン。私たちの生活を豊かにしてくれるモノがどんどん日常生活に溶け込んできています。ご存知の通り、これらの製品はリチウムイオン電池というバッテリーが駆動源になっています。このような時代の流れの中、リチウムイオン電池のリサイクルに関して、包括的に取り組む組織も世界で立ち上がってきています。グローバル・バッテリー・アライアンス(GBA)、欧州バッテリー同盟(EBA)など。これから電気自動車の大到来時代を迎えるにあたって、これらの組織は、特に電気自動車用リチウムイオン電池のリサイクルに重点を置いて、その統制管理活動を行っています。電池の回収は、かなり以前から行われてきたことですが、最近よく耳にするようになった「持続可能な社会」の実現に向けて、世界を挙げてバッテリーの回収と再利用に取り組む時代に突入してきました。今回の記事では、バッテリー資源のリサイクルを取り巻く最新の状況について、見ていきたいと思います。

リチウムイオン電池市場について

ある予測によると、2030年には世界の乗用車用リチウムイオン電池の需要が、2020年の実績比で約15倍にも達すると見られています。日本はノーベル賞受賞者が出たように、リチウムイオン電池の技術開発において、世界をリードしてきました。テスラに車載用電池を供給するパナソニック、民生用で一定のシェアを握るTDKなど、日本メーカーが強い分野でもあります。しかし、現在のところ、車載用については、中国のCATL社(寧徳時代新能源科技)が世界シェア1位、続いて韓国のLG化学となっており、海外メーカーの存在感が際立っています。リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すと、10年くらいで性能が3割から4割劣化すると言われています。今後、リチウムイオン電池が流通するにつれて、再利用やその原料であるレアメタルの再資源化が活発になってくると予想され、リサイクルを想定した関連市場の成長も期待されているところです。

(出所)調査会社B3

グローバル・バッテリー・アライアンス(GBA)

冒頭でも触れたグローバル・バッテリー・アライアンス(以下、GBA)について見てみたいと思います。GBAは2017年に設立されたバッテリー業界で最大の国際的アライアンスです。鉱山会社、電池メーカー、自動車メーカーなど世界約70の企業や組織から成ります。昨年には、日本の大手商社である丸紅も加盟しました。この組織の目標は、2030年までに倫理的且つ持続可能なバッテリー・バリューチェーンを構築することにあります。倫理的且つ持続可能が意味するところは、原料から最終製品のバッテリー製造までの全工程において、児童就労や手掘り鉱山からの原料が使用されていないことを証明できるサプライチェーンを構築するということです。また、GBAはパリ協定で合意された温室効果ガスの排出目標の達成に貢献していくとし、脱炭素社会に向けて、循環型のバッテリー・バリューチェーンの実現を目指していきます。丸紅については、2021年2月に北米最大手の電池リサイクル業者と戦略的パートナーシップを締結しました。廃棄されたリチウムイオン電池から原料のコバルトやニッケルを精製して、再利用する循環型ビジネスに取り組んでいます。

欧州バッテリー同盟(EBA)

欧州バッテリー同盟(以下、EBA)は、2017年に欧州委員会によって設立されました。その背景には、東アジア諸国(日中韓)に電気自動車向け車載バッテリーの開発から販売において、先行されているという危機感がありました。実際のところ、2020年12月時点で欧州に本拠地を置く車載バッテリーメーカーは、スウェーデンのスタートアップ企業・ノースボルト社とドイツ・ベルリン郊外にあるテスラの2社しかない状況です。EBAは、今後欧州企業による車載バッテリーの市場シェアとプレゼンスを高めていくために結成されたとも言えるでしょう。そして、先述のGBA同様に持続可能な循環型サプライチェーンの構築を目標として掲げています。ビジネスとしての側面を持ちながらも、循環型社会への適応を加盟企業に対して求めていく姿勢です。欧州は世界の脱炭素社会の先導役とも言える立場にあります。市場競争とエコ社会の実現という両輪をどのように推進していくのか、これからの取り組みに注目されます。

中国CATL社の車載電池交換ビジネス

最後に中国から車載用リチウムイオン電池の最新状況をご紹介します。今年1月、車載用リチウムイオン電池で世界トップシェアの中国CATL社(寧徳時代新能源科技)が、車載電池の交換事業に参入することを発表しました。新たな電池交換サービスのブランドとして「EVOGO」を立ち上げ、独自開発した交換用モジュール型バッテリー「Choco-SEB(スワッピング・エレクトリック・ブロック)」の普及を図っていきます。このバッテリーは1つのブロックで200㎞の走行が可能です。これはユーザーが交換時にブロックを1点以上選んで、自由な組み合わせによって、様々な走行距離のニーズに柔軟に対応することができるというものです。中国では世界に先駆けて電気自動車が広がりつつありますが、依然として航続距離や充電に対する不安が消費者側にあります。CATL社は、こういった懸念を払拭するべく、車載電池を共有資産として独立させました。電気自動車の浸透と循環型バリューチェーンの構築のために、このビジネスが果たす役割は、非常に大きいと言えるでしょう。

まとめ

今のところ、日本では電気自動車の普及が進んでいないため、そのバッテリーのリサイクルについては、まだ現実感が無いように思われます。しかし、最近になって、トヨタ自動車が2030年までに年間販売台数の4割に相当する350万台を電気自動車にする、日産・三菱・ルノー3社連合が今後5年間で約3兆円を電気自動車の開発に投資する、そしてソニーも電気自動車の開発に乗り出すことなど、日本も電気自動車に急旋回するのではないかと思われるニュースが相次いでいます。予想外にも早く電気自動車時代が到来すれば、日本でも車載バッテリーのリサイクル事業の担い手が、次々と誕生してくることでしょう。Resoryでは世界各地でマーケティング・リサーチ業務を行っています。今回取り上げた電気自動車やバッテリー業界など新たなビジネスはもちろんのこと、様々な市場や業界動向に至るまで、ワールドワイドにマーケティング調査を展開しています。Resoryには世界各国で活躍する業界エキスパートとの強力なネットワークと協業体制があります。Resoryがご提供させて頂くのは、インターネットやメディアでは決して入手のできない海外の活きた生情報です。コロナ禍で自由な海外渡航が、まだまだ制限されている今こそ、Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティングの一助として頂ければ幸いです。海外のマーケティング・リサーチと言えば、是非一度Resoryまでお気軽にご相談下さい。