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2021.12.28

【欧州データインフラ・GAIA-Xの発足!】米中に対抗する欧州発プラットフォーマ―は誕生するか?

昨今のデジタル社会において、私達がよく利用しているプラットフォームと言えば、やはりアメリカ企業のものが多いでしょう。グーグル、アップル、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾンなど。世界を見てみると、これらアメリカ企業の他に、BATと総称されるバイドゥ、アリババ、テンセントといった中国企業の存在も大きくなっています。アメリカと中国の企業によって、世界のデジタル覇権が二分されようとしている今、欧州が独自のデータ流通基盤である「GAIA-X(ガイア・エックス)」を立ち上げて、動き出しました。欧州はアメリカと並んで、政治・経済・金融・軍事で世界をリードするポジションにありながら、デジタル・データの分野では、米中に立ち遅れている感がありました。データは「21世紀の石油」。そう言われる現代において、データを掌握できるかどうかは、国際社会でのプレゼンスを左右する極めて重要なファクターとなっています。様々な点で結束を固めている欧州諸国ですが、GAIA-Xの始動によって、デジタル・データの領域では、一体どのような共同体を目指していくのか、その内容について見ていきたいと思います。

GAIA-X・欧州統合データ基盤プロジェクトの発足

2020年6月、ドイツが主導して、フランスと共に準備を進めてきたGAIA-Xが発足しました。冒頭でも触れた通り、米中を中心とする巨大IT企業の勢力は、欧州のデジタル社会にも既に大きな影響を及ぼしています。これらに伍していける欧州独自のプラットフォーマ―はまだ存在していません。そこで欧州がデジタル主権を確立すべく立ち上げたのが、GAIA-Xと言えるでしょう。このような壮大な構想を推進していくためには、やはり官民一体となった取り組みが欠かせません。GAIA-Xには、ドイツのボッシュ・ドイツ銀行・シーメンス・SAPやフランスの大手ITコンサル会社であるAtos社などが参画しています。GAIA-Xの目的は、単一システム上で欧州内外のあらゆるクラウドサービスを統合していくことにあります。容易にデータ交換を行えるよう認証作業を標準化し、相互運用性を高めていくことが目指されています。

動き出したGAIA-X

GAIA-Xは、欧州内外のデータ収集と活用を統括的に行うデータインフラの実現に向けて動き出しています。デジタル主権の確立を標榜する一方で、開放性と透明性を持って、自由な相互アクセスができるよう、システムの整備が行われていくことになります。2020年10月、EU27か国が署名した次世代クラウドビジネスの構築に関する共同宣言では、2021年から2027年の間で、20億ユーロを拠出して、各国企業の投資と合わせて合計100億ユーロの投資が合意されました。この中において、GAIA-Xは代表的な取り組みとして位置付けられています。暗号資産GAIA-Xトークンを発行して、GAIA-Xにおける通貨として流通させる計画も検討されています。GAIA-Xは、インダストリー4.0(第4次産業革命)やスマートリビング(より快適な生活実現のためのサービス)といった次世代ビジネスや生活を支える基盤技術として、今後大きく発展していくことが期待されます。

GAIA-Xの課題

GAIA-Xの作業チームメンバーには、マイクロソフト・グーグル・アマゾン・IBMなどアメリカの巨大プラットフォーマ―も名を連ねています。その意味で、GAIA-Xは欧州の完全単独でのインフラ構築とは言えない側面を持っています。今後アメリカなど諸外国の法的基盤との調整を図っていく必要があると言えるでしょう。また、GAIA-Xにおいては、特に欧州域内におけるデータ保存に関して、厳格な条件を設けています。既に定められている欧州内のデータ移転を規制する「EU一般データ保護規則(GDPR)」との兼ね合いも考慮して、これから議論が進んでいくものと思われます。デジタル・データの世界において、自由な情報の往来が望まれる一方で、各国にはそれぞれの規制や条件もあります。GAIA-Xが高度に実現していくためには、諸外国との利害調整など、まだまだクリアすべき課題は多くありそうです。

欧州発のプラットフォーマ―は誕生するか?

さて、冒頭でも述べた通り、世界は米中のプラットフォーマ―が、デジタル・データ領域で幅を利かせている状況にあります。GAIA-Xをはじめとする欧州のデジタル戦略は、これらに対抗すべく、特にB to Bでのプラットフォーマ―の育成に重点が置かれています。米中のプラットフォーマ―は、従来のB to C分野(コンシューマー領域)に加えて、B to B分野にも進出して、シェアを高めてきており、その危惧からGAIA-Xが立ち上がったと言うこともできます。しかし、海外のプラットフォーマ―の排除だけを主眼とすると、それに対応し得る欧州のプレーヤーは、一部の大企業に限定されてしまいます。その結果、欧州におけるデジタルビジネスの発展が妨げられて、GAIA-X本来の主旨が実現できないおそれもあります。多種多様なプレーヤーによるイノベーションの創出によってこそ、GAIA-Xは完成度の高いデータインフラとなるのではないでしょうか。米中のプレーヤーを凌駕する欧州発のプラットフォーマ―が次々と誕生するためにも、柔軟な枠組みと対応が求められます。規制と緩和というバランスの取れた欧州の施策に期待したいところです。

まとめ

データ覇権を巡る競争は、これからますます激化していくものと思われます。スピード勝負一本と言っても良いほど、早い者勝ちの状況になるのではないでしょうか。そこには追随や二番煎じといった考え方は通用しないのかもしれません。既にアメリカや中国の巨大IT企業がリードして作り上げてきたデジタル・データの世界に切って入り込むことは、なかなか容易なことではなさそうです。そのような中、欧州挙げてのGAIA-Xは、ある意味挑戦とも言うべく、果敢に始動しました。ユーザーの立場としては、新たな欧州プラットフォーマ―の出現が待望されるところです。近い将来、デジタル世界の勢力図が一変するほどのプレーヤーが誕生して、イノベーションが実現するとすれば、今後もGAIA-Xの取り組みに関心を持って、見続けられるのではないかと思います。Resoryでは世界各地でマーケティング・リサーチ業務を行っています。今回取り上げたIT業界はもちろんのこと、様々な市場の調査をワールドワイドで展開しています。世界各国で活躍するエキスパートと協業して、海外現地のリアルな状況をレポートにまとめて、お客様にお届けさせて頂くことが可能です。海外現地でのインタビューやアンケートなどを通じて、インターネットなどでは決して入手ができない海外の活きた生の情報です。コロナ禍で自由な海外渡航が、まだまだ困難な状況にあります。そのような今こそ、Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティングの一助として頂ければ幸いです。海外のマーケティング・リサーチと言えば、是非お気軽にResoryまでお問い合わせ下さい。