Resory

お問い合わせ 資料ダウンロード

2021.12.09

【世界に広がるアマゾン主導の気候変動対策!】クライメート・プレッジ(気候誓約)の影響力とは?

2019年9月にアマゾンとグローバル・オプティミズム(Global Optimism)は「クライメート・プレッジ」を立ち上げました。クライメート・プレッジ(Climate pledge)とは、日本語訳では「気候誓約」という意味になりますが、ゼロカーボン(脱炭素)に向けて気候変動対策を実行していくことで合意したいわば民間のコンソーシアム(連合体)と言うことができます。クライメート・プレッジでは、参画企業に対して2040年までにゼロカーボンを達成するように求めています。これは2015年に締結されたパリ協定での2050年より10年も早い目標になります。2021年9月現在、世界で既に200社以上の企業が、このクライメート・プレッジに同意して署名しています。気候変動対策について、国家間では毎年COP(気候変動枠組条約締約国会議)で話し合われ、直近では今年11月に第26回目がイギリスで開催されました。クライメート・プレッジはアマゾンが主導するだけあって、アメリカ企業を中心に世界を股にかけてビジネスを展開する大手の多国籍企業が続々と賛同して、取り組みの輪が広がりつつあります。世界の先進企業は、なぜ国家レベルより迅速な気候変動対策に打って出るのか?そこには先進企業ならではのビジネス戦略も隠されていそうです。

アマゾン創業者 ジェフ・ベゾス氏のメッセージ

クライメート・プレッジの創設にあたり、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏

は次のように語っています。「多くの企業が気候変動対策に取り組んでいる中、アマゾンはその中心的な役割を果たすべく、同社のスケールを活用して、現状を変革することにした。もしパリ協定の目標を10年早く達成することができたら、他の企業もそれを達成することができるはず。多くのグローバル企業のCEOは気候変動対策に関する誓約に関心がある。クライメート・プレッジに署名する大企業は、その目的を果たすために必要な商品やサービスに対して投資すべき時期に来ている」というメッセージを発信しました。アマゾンは年間100億以上とも言われる商品の販売を手掛けており、グローバルレベルで関わる企業数や与える影響力には甚大なものがあります。クライメート・プレッジによる気候変動対策の取り組みは、こうしてジェフ・ベゾス氏の決断一つによって、グローバル企業間に広がっていくことになりました。猛烈な勢いで世界にアマゾン経済圏を作り上げた同社が、自ら台風の目となって、世界中の企業を巻き込んでいくわけですから、クライメート・プレッジの拡大も相当なスピード感で進んでいくものと予想されます。クライメート・プレッジは、国家レベルを超える気候変動対策の世界スタンダードになる可能性さえも秘めています。今後、ビジネスでアマゾンと関わりのある企業は、自ずとクライメート・プレッジへの賛同を表明していくことになるでしょう。

クライメート・プレッジの骨子

クライメート・プレッジの骨子を以下で見ていくことにしましょう。クライメート・プレッジに署名した企業は、これらについて同意することが求められています。

  1. 温室効果ガスの排出量について、定期的な計測と報告を行うこと。
  2. 再生可能エネルギー・原材料削減をはじめ、炭素排出量の削減戦略を通じて、パリ協定に沿った脱炭素化を実行すること。
  3. 2040年までに年間炭素排出量を実質的にゼロにすること。

クライメート・プレッジの内容は、国家間で取り決められたものと決して大きな隔たりがあるわけではありません。アマゾンが重視しているのは、あくまでスピードです。スピード感を持ってビジネス変革や投資を行っていくよう、参画企業に対して、呼び掛けているのです。

アマゾンの取り組み

さて、クライメート・プレッジの発起人であるアマゾン自身の取り組みを見てみたいと思います。アマゾンは世界の企業にかけ声を掛けるだけではなく、自ら率先して、気候変動に対する対策を着々と実行しています。

電気自動車メーカー・Rivianへの投資

Rivianはミシガン州に本社を置くアメリカの無公害電気自動車メーカーです。

アマゾンはRivianに対して、4億4000万ドルの投資を行いました。これにより、脱炭素社会の主役とも言える電気自動車の生産を加速することになります。また、2019年にアマゾンはRivianに対して、10万台の電気配送車を発注しました。2030年までにこの全ての車両を運用することで、二酸化炭素の排出量を年間400万トン削減できるとしています。

再生可能エネルギーの電力比率を100%へ

アマゾンは2024年までに再生可能エネルギーの電力比率を80%に、そして2030年までには100%達成することを目標として定めています。具体的には、風力と太陽光発電による15件の再生可能エネルギープロジェクトに着手しており、今後年間1300メガワットの再生可能エネルギーと380万メガワットのクリーンエネルギーを供給していく予定です。また、世界の自社物流拠点などにも太陽光発電システムを設置して、再生可能エネルギーへのシフトを進めています。

森林再生への投資

アマゾンは、世界中の森林や湿地などを保護するために、1億ドルを投資してThe Right Now Climate Fundを立ち上げました。このファンドでは、プロジェクト全体を通じて、大気中から数百万トンもの炭素を除去するとしています。

クライメート・プレッジの参画企業

最近のクライメート・プレッジへの署名企業としては、P&G、HP、ネスプレッソ、セールスフォースなどが挙げられます。この他にもコカ・コーラ、マイクロソフト、ユニリーバなど世界の大手先進企業が既に署名済みです。クライメート・プレッジの署名企業による世界の合計年間売上高は1兆8000億ドル以上にのぼり、21ヵ国26業界にわたって、従業員数は700万人以上となっています。クライメート・プレッジの存在が、いかに大きくなりつつあるかは明らかです。また、署名企業による炭素排出量は、2020年を基準として、2040年までに年間19億8000万メートルトン削減できる見通しです。これは世界の年間排出量の5.4%に相当します。

まとめ

アマゾンが立ち上げたクライメート・プレッジの影響力は、今後もますます拡大していくことでしょう。アマゾンのような企業が中心になるからこそ、世界の企業も次々と賛同して、追随してくることは間違いありません。誓約通り、もし2040年までに署名企業がゼロカーボンを達成すれば、今の想像を超えた地球の姿が現れるのかもしれません。そして2040年からパリ協定の2050年までの10年間は、さらに新しい環境投資やイノベーションが生まれてくることでしょう。これからアマゾンを利用して買い物をする度に、クライメート・プレッジのことが頭をよぎって、個人としても環境保護活動に従事するようになれば、それもまたアマゾンの隠された戦略と言えるのではないでしょうか。Resoryでは世界各地でマーケティング・リサーチ業務を行っています。インターネットでは決して入手できない海外の生情報をお客様にご提供させて頂いております。今回の記事で触れた電気自動車、再生可能エネルギーのようなニューエコノミー業界から世界の様々なトレンドまで、お客様のニーズに合わせたオリジナルの調査が可能です。Resoryをご活用頂いて、皆様の海外マーケティングの一助として頂ければと思います。海外のマーケティング・リサーチと言えば、是非お気軽にResoryまでご相談下さい。