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NEW 2021.09.23

【アンモニアは「脱炭素社会」の救世主!?】世界で加速する石炭火力発電用アンモニアへの製造投資

「脱炭素」、「カーボンニュートラル」。最近よくテレビや新聞で目にすることが多くなったキーワードです。脱炭素とは、クリーンな社会の実現を目指すために、石炭のような化石燃料の使用量を減らすなどして、CO2(二酸化炭素)の排出量を削減していくことを意味しています。特にCO2排出量の多い先進国が率先垂範して、グローバルレベルで取り組んでいる活動です。そして今、石炭に代わって、燃焼時にCO2を排出しない物質として、一躍注目を集めているのが「アンモニア」です。アンモニアといえば、主に肥料として利用されていて、刺激臭が強い物質というイメージを持たれている方も多いと思います。なぜ脱炭素社会でアンモニアが重宝されるのか、アンモニアの利用価値とは?その背景と今後の課題について、見ていきたいと思います。

脱炭素時代に期待されるアンモニア

脱炭素時代が到来して、CO2の削減が声高に叫ばれるようになってきています。特にCO2の排出量が多い石炭火力の発電に対しては風当りが強く、代わって太陽光発電や風力発電などによる再生可能エネルギーの模索が世界中で行われています。そんな中、石炭火力発電にあって、石炭に代わる新たなクリーン燃料として期待されているのが、実は「アンモニア」なのです。アンモニアの分子式は「NH3」で、窒素(N)と水素(H)から合成されていて、前述の通り、燃焼してもCO2を排出しません。さらに、次世代エネルギーとして有望視されている水素の輸送媒体(キャリア)としての役割にも注目が集まっています。水素は液化するにはマイナス253℃まで冷却する必要があるため、気化せずに輸送することが難しい物質です。一方で、アンモニアはすでに様々な用途で使用されていることから、運搬や貯蔵の技術が確立されており、水素の輸送にも一役買うという利点も持ち合わせています。

アンモニアを利用した石炭火力発電

アンモニアは、クリーンな燃料として、石炭火力の発電における切り札になろうとしています。日本ではすでにアンモニアの燃料としての実用化に向けた実証実験が着々と進められています。例えば、もし日本国内の大手電力会社が保有する全ての石炭火力発電所で、アンモニアを20%混ぜる「混焼」という方法で発電を行うと、CO2が約4000万トンも削減できるという結果が試算されています。将来的にはアンモニアの混焼比率を上げていくプロセスを確立して、石炭に代わってアンモニアだけを燃料として使用する「専焼」も実現化される見通しになっています。下の図は混焼と専焼によるCO2排出削減量のシミュレーションです。

(出典: 日本・経済産業省 資源エネルギー庁 ホームページ)

まだまだ足りないアンモニア

ここで世界におけるアンモニアの需給状況を見てみたいと思います。2019年の世界全体でのアンモニア生産量は約2億トンです。一方で、貿易取引量は2018年で約2000万トンとなっており、つまり海外から調達できるアンモニアの輸入量は約1割程度にとどまっています。日本は2019年のアンモニア消費量が約108万トンで、内訳は国内生産品が8割、インドネシアとマレーシアをはじめとする輸入品が2割という状況になっています。先の図が示す通り、石炭火力発電1基で20%を混焼するだけでも、約50万トンのアンモニアが必要とされます。これから石炭火力発電の新たな燃料として、アンモニアの需要が増大していくことを想定すると、供給不足になることは必至と見られており、安定調達に向けた取り組みを強化していく必要性が出てきています。 

世界で石炭火力発電用アンモニアへの製造投資

脱炭素社会で大きな需要が見込まれ、供給不足が懸念されるアンモニアですが、日本の大手総合商社などが製造投資に乗り出しました。資源開発は大手総合商社の得意分野ですが、以下で具体的な事例をご紹介します。

三菱商事 

三菱商事とイギリス・オランダ石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルは、カナダでアンモニアを製造するために、提携することを発表しました。投資額は1000億円から2000億円で、今年8月に三菱商事とシェルのカナダ現地法人が覚書を交わし、2020年代後半からアンモニアの製造を開始する予定です。このプロジェクトでは、三菱商事がカナダ西部のアルバータ州に工場を建設し、現地で調達する天然ガスから水素を生産、さらに窒素と反応させてアンモニアを製造します。シェルは天然ガスから水素を生成する過程で発生するCO2を回収して、地中に貯留する設備を開発中です。年産で約100万トンを見込んでおり、日本の電力会社向けに輸出販売される予定です。

伊藤忠商事

伊藤忠商事はカナダで年産100万トンのアンモニア製造のプロジェクトに着手します。総事業費は約1400億円、2023年にプラントの建設に着工し、2026年には商業生産の開始を目指していくということです。また、カナダの他にロシアのイルクーツク近郊からも調達できる体制を整えて、日本へのアンモニアの安定供給を図ります。

INPEX(国際石油開発帝石)

今年7月、INPEX、火力発電事業者のJERA、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、アラブ首長国連邦(UAE)の国営石油会社と現地におけるアンモニア製造事業の事業化可能性に関する共同調査の契約を締結しました。これはUAEの首都アブダビにおいて、アンモニアを製造し、その生成過程で排出されるCO2は、INPEXが参画するアブダビの陸上油田において、CO2を利用する原油回収促進に転用するというもので、その事業化の実現に向けた調査です。 

アンモニアの安定供給に向けて

関係方面から大きな期待を寄せられているアンモニアですが、その確保に向けた取り組みは、まだまだ始まったばかりです。火力発電はその安定供給とコストの安さから、長らく石炭を燃料として頼ってきました。アンモニアがそのポジションに取って代わるには、世界的に大規模なサプライチェーンの構築と価格を抑えていくことが今後の課題となります。日本では2020年10月に「燃料アンモニア導入官民協議会」が発足しました。政府機関と民間企業によって構成され、燃料としてのアンモニアの供給に関して、具体的な道筋について、話し合われていく予定です。

まとめ

アンモニア、水素、燃料電池、電気自動車と脱炭素社会に関連する業界は、今後もますます世界中から多くのプレーヤーが市場に参入してくるものと予想されます。こういった新時代のビジネスを推進していくためには、日本のみならず、世界のマーケットの動きにも目を向けなければなりません。そのためには常に海外各地の情報をリアルタイムで入手していくことが求められます。そして、Resoryではそのようなお手伝いをさせて頂くことが可能です。世界中のエキスパートと連携して、お客様のニーズに沿った海外の市場動向について現場で調査したレポートをご提供させて頂くことができます。海外のリアルなマーケット情報といえば、是非Resoryに一度ご相談頂ければと思います。